【令和8年6月5日施行】登録講習機関の修了審査基準が変わります|改正ポイントを監査実施団体が解説

監査 2026年04月02日

【令和8年6月5日施行】登録講習機関の修了審査基準が変わります
改正ポイントを監査実施団体が解説

令和7年12月5日に「無人航空機操縦士実地試験実施基準」および「実施細則」が改正されました。令和8年(2026年)6月5日の施行前に、登録講習機関として対応すべき変更点を、監査実施団体の立場からわかりやすく解説します。

修了審査 実施基準改正 令和8年6月施行 登録講習機関 受験者補助員 保護具着用

今回の改正の概要

令和7年12月5日付で「無人航空機操縦士実地試験実施基準」(国空無機第298768号)が改正されました。この基準は実地試験だけでなく、登録講習機関が実施する修了審査にも準用されるため、すべての登録講習機関に影響します。

項目内容
改正公布日令和7年(2025年)12月5日
施行日令和8年(2026年)6月5日
対象文書 ① 無人航空機操縦士実地試験実施基準
② 一等無人航空機操縦士実地試験実施細則(回転翼航空機・マルチローター)
③ 二等無人航空機操縦士実地試験実施細則(回転翼航空機・マルチローター)
影響範囲登録講習機関が実施する修了審査(実施基準の準用規定による)

令和8年6月5日の施行までに、事務規程の改訂と体制整備を完了させる必要があります。施行後の監査では改正後の基準に基づいた審査体制が確認されます。

主な改正ポイント(登録講習機関への影響)

① 受験者補助員のマルチローターへの明記【重要】

受験者補助員の制度はもともと飛行機の実地試験実施細則には存在していた制度です。今回の改正で、回転翼航空機(マルチローター)の実施細則にも明記されました。登録講習機関においては修了審査への準用により、マルチローターの修了審査でも受験者補助員を配置できることが明確になっています。

改正後(令和8年6月5日施行)改正前
【マルチローター細則に追記】安全確保に必要と判断される場合、試験員又は試験員から指示を受けた試験員補助員若しくは受験者補助員が受験者に代わって操縦を行う。受験者補助員は、緊急時の安全確保の観点から、必要に応じて受験者が配置するものとする。 飛行機の細則には規定あり。マルチローターの細則には記載なし(新たに追記)

受験者補助員の資格要件

要件内容
飛行経験直近2年間で6ヶ月以上の飛行経験
飛行実績直近2年間で50時間以上の飛行実績
対象機種実技試験を実施する無人航空機の種類について
登録講習機関への影響

マルチローターの修了審査で受験者補助員を配置する場合、上記の資格要件を満たしているかを事前に確認・記録する必要があります。飛行機の修了審査ではすでに対応されているケースが多いと思われますが、マルチローターについても同様の運用を整備してください。

② 保護具着用の明文化(備え置きから使用義務へ)【重要】

保護具については、登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示(別表第三)において、以前から施設・設備として「備え置くこと」が定められていました。今回の改正で実施細則に着用義務が明記されたことにより、実際に「使用すること(着用すること)」が明確化されました。

根拠内容位置づけ
告示(別表第三)
改正前から
ヘルメット・保護メガネ等の保護具を備え置くこと 施設・設備の基準として規定。
「備え置く」だけで着用義務は明文なし
実施細則
令和8年6月5日施行
受験者・試験員・試験員補助員・受験者補助員は保護具を着用すること (マルチローターの細則には記載なし)

⚠ 保護具は告示に基づきすでに「備え置く」ことが求められていましたが、今回の改正で「着用すること」が実施細則に明記されました。保護具を揃えているだけでなく、修了審査の際に全関係者が実際に着用しているかが監査の確認対象となります。着用の徹底と運用手順の整備が必要です。

③ 風速確認方法の変更

風速確認に関して、一等・二等で内容が整理されました。

区分改正後改正前
一等 試験員又は試験員補助員が風速を計測し、基準未満の風速であることを確認 (試験員補助員の明示なし)基準以下の風速であることを確認
二等 密閉された建築物等の明らかに風の影響がない屋内を除き、各科目開始前に風速計で計測し基準未満を確認 屋外で実施する場合に限り確認。基準以下の風速であることを確認
ポイント

「以下」から「未満」への変更により、設定された風速値と同値の場合は実施不可となります。また二等については、屋内での実施であっても「密閉されていない」空間では風速確認が必要になります。

④ 口述試験(飛行前・飛行後点検)の減点基準の明確化【重要】

これまで実技試験のみに設定されていた減点基準に加え、口述試験(飛行前点検・飛行後点検)の減点基準が新たに明記されました。

新設された口述試験の減点細目(一等・二等共通)減点数主な適用事項
航空法等の違反不合格アルコール・薬物影響、機体未登録、承認未取得等
危険な操作不合格危険な速度での飛行、安全確保なしの推進系統作動等
墜落・損傷・制御不能不合格機体の墜落・衝突・損傷・制御不能
不正行為不合格助言・補助の受領、試験の妨害行為等
点検漏れ10点飛行に必要な点検を一つでも行わなかったとき
日常点検記録の記載漏れ・誤り5点必要な記載項目の漏れ・誤り
日常点検記録の軽微な誤り1点様式の記入方法に従わない記録等

また、口述試験の減点適用に関して以下のルールが新設されました。

  • 飛行前点検の口述試験を通じて複数の減点細目が生じた場合は、最も減点数が高いもののみを適用する
  • 制限時間内に回答・点検・記録を行わなかった場合は、それぞれ未回答・点検漏れ・記録漏れとして取り扱う

⚠ 口述試験の減点基準が明確化されたことで、修了審査員は飛行前点検・飛行後点検においても厳密な採点が求められます。修了審査員への周知・研修が必要です。

⑤ 点検・記録に制限時間が設けられた【受講者・登録講習機関双方に大きな影響】

今回の改正で、口述試験(飛行前点検・飛行後点検)における回答・点検・記録に制限時間が設けられたことは、受験者・登録講習機関の双方にとって非常に大きな変化です。

改正後(令和8年6月5日施行)改正前
回答又は点検及び記録は制限時間内に行うものとする。制限時間内に回答、点検又は記録を行わなかった場合は、それぞれ未回答・点検漏れ・記録漏れがあったものとして取り扱う。 (制限時間の規定なし。時間超過による減点・不合格の明文規定なし)

制限時間内に完了しなかった場合の扱いは以下のとおりです。

完了しなかった行為取り扱い減点への影響
回答が間に合わなかった未回答として扱う各減点細目に応じた減点
点検が間に合わなかった点検漏れとして扱う10点減点
記録が間に合わなかった記録漏れとして扱う5点減点(記載漏れ・誤りと同等)

制限時間は実地試験実施細則に基づき設定するものです。受験者への事前周知と審査員への運用徹底が必要です。

受験者への影響

これまで「丁寧にゆっくり点検すれば減点されない」状況でしたが、今後は制限時間内に正確に点検・記録を完了させる能力も評価されます。講習段階から時間を意識した訓練が重要になります。

登録講習機関への影響

制限時間の設定・運用は各スクールの責任です。実施細則に基づく制限時間の設定・受験者への事前告知・審査員への運用指導の3点をセットで整備する必要があります。制限時間の設定が不明確だった場合は監査での指摘対象となる可能性があります。

⑥ 減点区画への進入通知の変更

減点区画への進入を受験者に知らせる主体が変更されました。

改正後改正前
試験員が受験者に進入した旨を知らせた後、概ね2秒以内に飛行経路に復帰させた場合は減点しない 試験員補助員が進入を知らせた後、速やかに飛行経路に復帰させた場合は減点しない

通知主体が試験員補助員から試験員であることが明確化され、復帰時間の基準も「速やかに」から「概ね2秒以内」と明確化されました。

⑦ 減点区画・不合格区画の有効・無効タイミングの明記

実技試験における減点区画・不合格区画がいつから有効になり、いつ無効になるかのタイミングが明記されました。

改正後(令和8年6月5日施行)改正前
制限時間の対象は、各試験科目において、試験員が受験者に離陸を指示した時刻から、機体が着陸した時刻までの時間とする。 同様の規定はあったが、区画の有効・無効タイミングとの関係が不明確

改正後の細則では、実技試験の各試験科目において:

  • 減点区画・不合格区画は試験員が離陸を指示した時点から有効となる
修了審査員への影響

減点区画・不合格区画の有効化・無効化のタイミングが明記されました。修了審査員はこのタイミングを正確に把握した上で採点する必要があります。修了審査員への周知・研修で必ず確認してください。

⑧ 異常事態における飛行の最低周回数の明記

目視内飛行の限定変更に係る実地試験(修了審査)の「異常事態における飛行」において、最低周回数が明記されました。

改正後(令和8年6月5日施行)改正前
異常事態における飛行において、最低周回数が明記された 最低周回数の明示なし

⚠ 異常事態における飛行の具体的な最低周回数については、公式の実施細則(改正後)をご確認ください。

登録講習機関への影響

修了審査員は改正後の細則に定められた最低周回数を正確に把握した上で採点する必要があります。講習段階でも受講者に最低周回数を周知し、訓練に組み込むことが重要です。

⑨ 準用規定の整理

登録講習機関の修了審査への準用に関する条項番号が整理されました。

改正後改正前
第1章から第5章まで(1-11及び1-13から1-15までを除く)の規定を準用 第1章から第5章まで(1-10及び1-12から1-14までを除く)の規定を準用

条文の追加・整理に伴う準用除外条項の番号変更です。内容は引き続き「学科試験合格の確認」「受験者が機材・試験場を準備する旨の規定」等が除外されます。

施行前(令和8年6月5日まで)に確認すべきチェックリスト

令和8年6月5日の施行までに以下の対応を完了させてください。

確認1
事務規程の改訂

修了審査に関する事務規程を改正後の実施基準・細則に合わせて改訂してください。受験者補助員の取り扱い・保護具の取り扱い・口述試験の採点基準等を追記・修正します。

改訂後は国交省への届出が必要な場合があります
確認2
保護具の準備

受験者・修了審査員・試験員補助員・受験者補助員全員分のヘルメット・保護メガネ等の保護具を準備してください。受験者に対しては事前に持参を案内するか、スクール側で用意するかを決定し、手順を整備します。

全関係者への周知が必要
確認3
点検・記録の制限時間を確認・設定

口述試験(飛行前点検・飛行後点検)における回答・点検・記録の制限時間を、実施細則に基づく時間で設定します。設定した制限時間は受験者へ事前に周知し、修了審査員にも運用手順を徹底してください。

受験者・審査員両方への周知が必要
確認4
修了審査員への研修・周知

口述試験の減点基準の明確化・進入通知の変更・風速確認方法の変更について、修了審査員に周知・研修を実施してください。研修の実施記録を残すことをお勧めします。

研修記録の保管を推奨
確認5
受験者補助員の資格確認フローの整備

受験者補助員を配置する場合の資格確認手順(飛行経験6ヶ月以上・50時間以上の確認方法)を整備し、記録様式を準備してください。

確認記録の保管が必要
確認6
風速確認手順の見直し

風速の基準が「以下」から「未満」に変更されました。風速確認の記録様式や手順書の表記を確認・修正してください。二等では屋内実施の場合でも、密閉空間以外では風速確認が必要です。

「以下」→「未満」の変更に注意

監査への影響

令和8年6月5日以降に実施される監査では、改正後の実施基準・実施細則に基づいた修了審査の実施体制が確認されます。

監査で確認される主な項目チェックポイント
事務規程の整備改正内容が事務規程に反映されているか
保護具の準備・管理全関係者分の保護具が準備され、運用手順が定められているか
受験者補助員の資格確認配置する場合の資格確認記録が保管されているか
風速確認記録各科目開始前の風速確認が「未満」基準で適切に記録されているか
口述試験の採点記録飛行前・飛行後点検の採点が新たな減点基準に基づき実施されているか
点検・記録の制限時間設定受験者への周知・審査員への運用指導が行われているか
審査員への周知記録改正内容の周知・研修が実施され記録されているか
監査実施団体からのアドバイス

施行日(令和8年6月5日)より前に事務規程の改訂・体制整備を完了させておくことが重要です。改訂内容に不明点がある場合や、事務規程の確認・相談は当社へご連絡ください。

よくある質問

制限時間の具体的な数値は実地試験実施細則をご確認ください。
即座に不合格ではありません。制限時間内に点検が完了しなかった場合は「点検漏れ」として扱われ、10点の減点となります。記録が間に合わなかった場合は「記録漏れ」として5点の減点です。ただし、減点累積で合格基準点を下回ると不合格になります。受験者には講習段階から時間を意識した点検訓練が重要です。
改正の公布日は令和7年(2025年)12月5日です。公布日に規定が正式に定められ、施行日の令和8年(2026年)6月5日から実際に効力が生じます。つまり、準備期間として約6ヶ月が設けられています。施行日までに事務規程の改訂・体制整備を完了させる必要があります。
受験者補助員の制度は、飛行機の実地試験実施細則にはもともと存在していた制度です。今回の改正で回転翼航空機(マルチローター)の実施細則にも追記されました。登録講習機関においては修了審査への準用により、マルチローターの修了審査でも受験者補助員の配置が制度上明確になっています。配置は必須ではなく「必要に応じて」とされていますが、配置する場合は直近2年間で6ヶ月以上の飛行経験かつ50時間以上の飛行実績の要件を満たしている必要があります。
実施基準で定められた風速の上限値(例:5m/s)に対して、「以下」の場合はその値と同値(5m/s)でも実施可能でしたが、「未満」に変更されたことで上限値と同値の場合は実施不可となります。例えば上限値が5m/sの場合、風速が5m/sであれば「以下」では実施可能でしたが、「未満」では実施できません。
事務規程を変更した場合は、国土交通省への届出が必要です(航空法施行規則の規定による)。変更内容・届出方法については国土交通省への確認、または当社へご相談ください。
川﨑 一礼
この記事の監修者
川﨑 一礼
ドローン事業責任者 / 行政書士(大阪会所属)・監査責任者
無人航空機の飛行許可承認申請・登録講習機関等の設立運営・監査実施団体の設立運営を専門とする行政書士。国土交通省に登録された登録講習機関等監査実施団体として、多くの登録講習機関の外部監査を実施しています。
株式会社フォローアップ

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