監査
2026年06月02日
ドローンスクールが行政処分を受けるとどうなる?
登録取消・業務停止の条件と予防策を行政書士が解説
「監査でどんな不備があると行政処分になるのか」「登録取消になったらどうなるのか」。令和6年10月のA社への厳重注意・令和7年6月のB社への業務改善勧告と、登録講習機関への行政指導が相次いでいます。監査実施団体として多くのスクールの外部監査を担当する行政書士が、航空法の条文に基づいて正確に解説します。
行政処分
登録取消
業務停止
登録講習機関
監査
航空法
監修者
川﨑 一礼
ドローン事業責任者・監査責任者 / 行政書士(大阪会所属)
無人航空機の飛行許可承認申請・登録講習機関等の設立運営・監査実施団体の設立運営を専門とする行政書士。国土交通省に登録された登録講習機関等監査実施団体にて、150件を超える登録講習機関の外部監査を実施しています。
この記事でわかること
① 航空法上の行政処分は「適合命令」「改善命令」「業務停止・登録取消」の3段階
② 登録取消になる5つの条件(航空法第132条の79)
③ 行政処分を受けた場合の受講者・修了者・スクール経営への具体的な影響
④ 行政処分リスクを低減するための5つの予防策と外部監査の役割
国土交通省による行政指導の事案
技能証明制度がスタートした2022年12月以降、国土交通省による登録講習機関への行政指導が複数件公表されています。これらの事案は、登録講習機関が省令の義務をどのような形で違反しうるかを具体的に示しており、業界全体への警鐘となっています。
| 発令日 |
対象機関 |
行政指導の種類 |
主な不適切事項 |
| 令和6年10月25日 |
A社
|
厳重注意 |
- 申請書添付書類の不備・不保存
- 審査員研修修了証明書の発行前の審査員による修了審査の実施
- 実地講習における必修履修科目の未実施
- 修了審査に合格していない者への修了証明書の発行
|
| 令和7年6月17日 |
B社
|
業務改善勧告 |
- 学科講習の修了を確認できない者への修了証明書の発行
- 実地講習・修了審査を実施していないとみなせる者への修了証明書の発行
- 特定飛行における承認の未取得
|
🚫 業務改善勧告は厳重注意より重い行政指導です。不適切事項がより深刻と判断された場合に発令されます。B社の事案では「実地講習・修了審査を実施していないとみなせる者への修了証明書の発行」という、資格の根幹を揺るがす不正が確認されています。
⚠ これらの行政指導は「行政処分」ではありませんが、行政指導に適切に対応しない場合や違反状態が続く場合には、適合命令・改善命令・業務停止・登録取消といった正式な行政処分に発展する可能性があります。
航空法では、登録講習機関に対する監督として4種類の手段が規定されています。行政指導はこれらの行政処分に至る前段階であり、登録講習機関は行政指導の段階で速やかに是正することが求められます。
行政処分の3段階
航空法が定める登録講習機関に対する行政処分は、違反の程度に応じて以下の3段階があります。
STEP
1
適合命令
航空法 第132条の77
講習が登録要件(第132条の70第1項)に適合しなくなったと認められる場合に、要件に適合するため必要な措置を講ずることを命ずるもの。講師の要件不足・設備の基準不適合などが対象となり得る。
STEP
2
改善命令
航空法 第132条の78
登録講習機関が省令第6条(講習事務の実施に係る義務)に違反していると認められる場合に、講習を行うべきこと又は講習事務の改善に必要な措置を命ずるもの。講習記録の不備・安全管理規程の未整備・本人確認の不徹底などが対象となり得る。
STEP
3
業務停止・登録取消
航空法 第132条の79
重大な違反がある場合や、適合命令・改善命令に従わない場合に、登録を取り消し、又は期間を定めて業務の全部もしくは一部の停止を命ずるもの。登録取消の場合、登録講習機関としての活動が完全に停止する。
行政指導(厳重注意)との違い
行政指導(厳重注意・口頭注意など)は法的拘束力のない任意の是正要請です。一方、適合命令・改善命令・業務停止・登録取消は法的拘束力のある行政処分であり、命令に違反した場合はさらに重い処分につながる可能性があります。行政指導の段階で適切に対応することが、行政処分リスクを避ける上で最も重要です。
登録取消・業務停止になる5つの条件
航空法第132条の79は、国土交通大臣が登録を取り消し、又は業務の停止を命ずることができる場合を以下の5つに定めています。
| 条件 |
内容 |
具体的な事例 |
| ① |
登録要件の欠格事由に該当したとき (第132条の70第2項第1号又は第3号) |
管理者が欠格要件(罰金以上の刑への処罰等)に該当した場合など |
| ② |
省令等の規定に違反したとき (第132条の73〜76、次条の規定) |
登録事項の変更届出の懈怠・講習事務規程の未届出・財務諸表等の未作成・業務の休廃止の未届出など |
| ③ |
正当な理由なく財務諸表等の閲覧請求を拒んだとき |
受講希望者等の利害関係人からの財務諸表の閲覧・謄写請求を正当な理由なく拒否した場合 |
| ④ |
適合命令・改善命令に違反したとき |
国土交通大臣から適合命令・改善命令を受けたにもかかわらず、必要な措置を講じなかった場合 |
| ⑤ |
不正の手段により登録を受けたとき |
登録申請書類の虚偽記載・要件を偽った申請など |
🚫 条件④が最も注意が必要です。適合命令・改善命令は行政処分の前段階ですが、これらの命令に従わない場合は直接的に登録取消・業務停止の対象となります。命令を受けた際は速やかかつ適切に対応することが不可欠です。
行政処分を受けた場合の影響
登録取消・業務停止の処分を受けた場合、スクール経営・受講者・修了者に多大な影響が生じます。
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スクール経営への影響
業務停止中は講習を実施できないため、売上が完全に停止します。登録取消の場合は再登録まで事業継続が不可能になります。処分の事実は官報に公示されるため、社会的信頼の失墜は避けられません。
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受講予定者への影響
処分前に受け付けた申請で未開始のものは、申請書類・料金を速やかに返還する義務が発生します。講習を受ける予定だった受講者は別の登録講習機関を探し直す必要があります。
📜
修了済み受講者への影響
適切でない方法で発行された修了証明書の有効性が問題となる可能性があります。不正に発行された修了証明書に基づいて交付された技能証明も取り消し対象となりえます。
⚖️
管理者・講師への影響
登録講習機関の管理者が欠格事由に該当した場合、個人としての信用にも影響します。罰則規定に該当する違反の場合、刑事責任を問われる可能性もあります。
⚠ 「外部監査で指摘されなかった」は行政処分の免責にはなりません。外部監査で見落とされた違反事項であっても、後から国土交通省が認定した場合には行政処分の対象となります。外部監査は早期発見・早期是正のためのツールであり、監査をパスすることが目的ではありません。
行政処分リスクを低減する5つの予防策
1
省令第6条の義務を日常的に遵守する
講習記録・修了審査記録の適切な作成・保管、安全管理規程・緊急時対応手順の整備と最新化、受講者の本人確認の徹底など、省令第6条が定める義務を日常業務として遵守することが最も基本的な予防策です。
2
講師・管理者の要件管理を徹底する
講師の技能証明の有効期限・飛行経験・定期研修(3年ごと)の受講記録を一覧で管理します。講師要件の経過措置撤廃(令和7年12月施行)への対応状況も確認してください。管理者の欠格事由該当の有無も定期的に確認が必要です。
3
変更事項は速やかに届け出る
登録事項に変更が生じた場合は、変更の2週間前までに国土交通大臣に届け出る必要があります(第132条の73)。講習事務規程の変更や業務の休廃止についても届出が必要です。届出の懈怠が行政処分の直接的な原因となります。
4
財務諸表等の作成・保管・開示体制を整える
毎事業年度終了後3か月以内に財務諸表等を作成し、5年間事務所に備え置く義務があります(第132条の76)。利害関係人からの閲覧請求に対応できる体制を整えておくことで、条件③の該当リスクを回避できます。
5
修了審査基準の改正への対応を完了させる
令和8年6月5日施行の
修了審査基準の改正(保護具着用義務・制限時間の新設・減点基準の見直し等)への対応が未完了の場合、適合命令・改善命令の対象となる可能性があります。施行日前に安全管理規程等の改訂を完了させてください。
外部監査が予防策になる理由
毎事業年度の外部監査(計画的監査)は義務ですが、単に「義務だから受ける」という位置づけではなく、行政処分リスクを低減するための積極的な予防手段として活用することが重要です。
| 外部監査の役割 | 内容 |
| 早期発見・早期是正 |
国土交通省が認定する前に不適切事項を発見し、是正できます。行政指導・行政処分を受ける前に問題を解消できます |
| 法的根拠に基づく指摘 |
行政書士が運営する監査実施団体は、省令・実施要領・実施細則の解釈に基づいた正確な指摘ができます |
| 改善命令への対応力向上 |
万が一改善命令を受けた場合でも、外部監査での是正実績が適切な対応の根拠となります |
| 随時監査リスクの低減 |
計画的監査で適切な是正を行うことで、予告なく実施される随時監査のリスクを低減できます |
行政書士が運営する監査実施団体の強み
株式会社フォローアップ(行政書士かわさき事務所)は、無人航空機の法務を専門とする行政書士が運営する監査実施団体です。航空法・省令・実施要領・実施細則の解釈から是正方法のアドバイスまで、法的根拠に基づいた適切な指摘と実務的なサポートを提供しています。行政処分リスクが高まっている今こそ、専門家による外部監査の受検をお勧めします。
よくある質問
航空法上、登録講習機関に対する行政処分は3種類あります。①適合命令(第132条の77):講習が登録要件に適合しなくなった場合の措置命令。②改善命令(第132条の78):省令第6条の義務に違反している場合の改善命令。③業務停止・登録取消(第132条の79):重大な違反がある場合や命令に違反した場合の処分。これらの前段階として、法的拘束力のない行政指導(厳重注意等)があります。
航空法第132条の79に基づき、①登録要件の欠格事由に該当したとき、②省令等の規定に違反したとき、③正当な理由なく財務諸表等の閲覧請求を拒んだとき、④適合命令・改善命令に違反したとき、⑤不正の手段により登録を受けたとき、のいずれかに該当する場合に、国土交通大臣は登録を取り消し、又は期間を定めて業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができます。
業務停止・登録取消の処分を受けた場合、処分の対象期間中は講習を実施できなくなります。処分前に受け付けた申請で未開始のものは、申請書類・料金の返還が必要になります。また、不適切な方法で発行された修了証明書の有効性が問題となる可能性もあります。受講者・修了者への信頼失墜という観点でも、行政処分の影響は甚大です。
外部監査は行政処分の免責にはなりません。「外部監査で指摘されなかった」という事実も、国土交通省が後から違反を認定した場合の酌量事由にはなりません。ただし、外部監査を通じて不適切事項を早期に発見・是正することは、行政処分リスクを実質的に低減する効果があります。
現時点で2件の行政指導事案が公表されています。①令和6年10月25日:A社(登録講習機関)に対する厳重注意。申請書添付書類の不備・不保存、修了審査に合格していない者への修了証明書の発行などが確認されました。②令和7年6月17日:B社(登録講習機関)に対する業務改善勧告。実地講習・修了審査を実施していないとみなせる者への修了証明書の発行、特定飛行における承認の未取得などが確認されました。業務改善勧告は厳重注意より重い行政指導です。いずれも行政処分ではありませんが、行政処分に発展する可能性のある重大な行政指導です。
株式会社フォローアップ / 行政書士かわさき事務所
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